会社は社長から多額の運転資金を借りている。返済不能だから、この際、会社は社長から債務免除を受けたい。会社には以前から多額の繰越欠損金があるから、債務免除の結果会社に利益が出ても税金はかからないと聞いた。本当に問題はないか?
債務免除を受けること自体には問題はない。一般的には、債務免除益と繰越欠損金とが相殺されるから通常の法人税等は発生しないことが多い。
しかし、この場合「留保金課税」という特別の課税がされることがあるから注意を要する。
会社の「役員借入金」、即ち会社が役員に対して負っている借金は、主に会社の運転資金と役員の未払給与である。
これらが多額になった場合、銀行に対する配慮等から債務免除によって利益を捻出し、財務諸表の体裁を整えることが行なわれる。
このような会社は、債務免除を受けるくらいだから、前期以前の繰越欠損金があることが多い。したがって、債務免除に
よって生じた所得を繰越欠損金と相殺すれば法人税等がかからないことになる。
しかし、ここで留意すべきは「留保金課税」である。留保金課税とは、資本金1億円超の一定の同族会社に限って特別な法人税を課する制度である(法法67)。同族会社は、オーナー一族の意思によって恣意的に利益を会社に留保し、配当等による社外流出を回避することができる。したがって、一定額以上の留保金に対しては特別の法人税を課するというのがこの制度の根拠であるが、批判もある。
社長一族がその所有する不動産を売却して、その資金を会社に貸付け、
これを債務免除するようなケースでは免除益が多額になる。このような場合は、留保金課税の適用を受けることが多い。
留保金課税は、法人税の申告書の構造上失念してもチェックが効かないから、税務調査ではじめて指摘を受けることもある。万全を期して対処したい。
上記の記述は、2010年4月30日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情等により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2010.4.30
|