5年前から資金繰りが苦しく役員報酬を未払にしており、未払役員報酬の累計額が3000万円ある。この度、仕入資金として500万円の融資を受けたいが、この未払役員報酬が障害になって融資に応じてもらえない。良い方法はあるか。又、税務上の問題点も教えてほしい。
未払役員報酬を増資に充て、資本金とする。但し所得税が課税される場合がある。
資金繰り上の理由から、役員報酬を未払にするケースは多い。
この場合、未払役員報酬が貸借対照表に残ることにより、自己資本比率が低下し、金融機関からの融資に支障が出ることがある。
対策として、未払役員報酬を会社に対して免除するなどの方法が考えられるが、課税上の問題がある。
ここでは、未払役員報酬を一旦役員借入金に振替え、その後増資する方法を検討する。未払役員報酬を役員借入金に振替えると、役員は会社に対して貸付金を有することになるから、この貸付金をもって現物出資により増資を行うのである。これにより、未払役員報酬が資本金に振替えられるため、結果として自己資本比率が増加することになる。
但し、未払の役員報酬に対して源泉所得税を納付していない場合は問題がある。源泉所得税はあくまで実際に支給した給与に対してのみ課税されるものであるから、役員報酬のうち未払部分については徴収も納付も要しない。
しかし、これを役員借入金に振替えると、一旦未払役員報酬を金銭で払い出して、しかる後に会社に貸し付けたと解釈されるから、役員借入金に振替えた段階で源泉所得税が課税される。
上記の記述は、2010年5月29日現在の法令・通達等に基づいています。その後の税制改正や個別事情等により、異なる課税関係が生じる場合がありますのでご注意ください。
2010.5.29 |