この事案は、A氏が京都市で賃借していた月額家賃96,000円のマンションから退居する際、差し入れていた40万
円の保証金(敷金)のうち21万円を差引かれて残額のみが返還されたことに対し、「消費者契約法」に違反するとして
、この「敷引特約」の無効を訴えていたものです。
「敷引特約」というのは、入居時に差し入れる保証金から、退居までの年数に応じて一定の金額を差しいて借主に返
還する特約で、主に関西地方に多くみられる契約の形態です。
これに対し、最高裁判所第一小法廷は3月24日、賃貸借契約に敷引金の額が明示されている場合は、借主は家賃
の額に加え敷引金の額についても明確に認識した上で契約を締結しており、借主の負担については合意がされている
として、敷引特約を有効とする判断をしました。
ただし、敷引金の額が高額すぎる場合などは、借主の利益を一方的に害するもので無効とするのが相当との見解も
示されました。
この判決により、敷引特約付きの契約を交わしている多くの不動産オーナーはほっと胸をなでおろしているかも知れ
ません。
しかし、2009年8月に大阪地裁が家賃45,000円、1年ごとに10万円の更新料を支払う契約を無効とした判決は
記憶に新しいところです。
両方の判決に共通しているのは、敷引特約や更新料そのものを有効または無効としているのではないということで
す。金額の多寡や、オーナーが借主に契約の内容を説明しているかどうかが、これらの判決の判断の基礎になってい
ることに注意する必要がありそうです。