会社設立に際して、本店所在地を銀座など一等地のバーチャルオフィスやレンタルオフィスに置き、実際の業務は別の事業所で行うという事業形態がとられることがあります。
ところで、警察庁は、最近金融機関に対して「振り込め詐欺」などの被害を未然に防止するために、口座開設手続きを厳格化することを求めています。これを受けて、金融機関は、新規に預金口座を開設しようとする法人に対して極めて厳格な審査を行っているようです。
具体的には、銀行で預金口座を開設しようとした場合、本店がバーチャルオフィスやレンタルオフィスで登記されていると、「総合的に判断した結果、応じられない」として口座開設を断られます。「総合的な判断」の具体的な内容の開示を求めても、行員がカウンター越しに「総合的な判断」を繰り返すだけで、口座を開設できない具体的な理由は説明しません。
三井住友銀行が配布しているパンフレットによりますと、新設法人(設立6月以内)が預金口座を開設するためには、次の「確認資料」の提出が求められています。
@ 履歴事項全部証明書
A 法人の印鑑証明書
B 手続きに来店する人の本人確認のための公的資料(運転免許証など)
C 税務署に提出した「法人設立届出書」
D 定款の写し
E 株主名簿・設立趣意書・設立時の貸借対照表または、「給与支払事務所等の開設届出書」 |
* @・A・Bは全ての法人が預金口座を開設するために必要な資料、C・D・Eは新設法人だけに求められる資料です。 |
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しかし、これらの資料を提出しても、本店がバーチャルオフィスやレンタルオフィスなどで登記されていると、口座開設は実際上困難です。また、本店をバーチャルオフィスなど以外の通常の場所で登記している場合でも、本店所在地以外にある銀行では預金口座の開設ができません。
要するに、「経営実態」があることが確認できないと口座開設に応じられない、というのが金融機関の基本的な立場です。例えばラーメン店を経営している会社なら、金融機関からすると店舗があり事業が行われていることが確認できますから、容易に口座開設に応じてくれます。ところが、バーチャルオフィスやレンタルオフィスなどで会社を登記していると、経営の実態が目で見て確認できないから口座開設に応じられない、ということになります。また、社長の自宅で会社を登記している一般的なケースでも、パソコン1台でネット販売を行っているような事業形態ですと「経営実態」を確認できない、ということになって口座開設ができないことがあります。
この扱いは、平成24年7月2日から実施されましたが、みずほ銀行などは既にそれ以前から、預金口座の新規開設に対して極めて慎重な対応をしているようです。
@ レンタルオフィスに会社名義の電話回線を引いて通話料などを支払う
レンタルオフィスに独自の電話回線を引いて通話料などを支払うと、事業所としての実態があることが証明でき、預金口座を開設できることがあります。
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A 銀行の担当者に事業の実態を見せて理解を求める
以前から取引がある銀行の場合ですと、銀行の担当者に会社を設立した経緯を説明し、事業の実態を見せて、本店をバーチャルオフィスやレンタルオフィスに置くことの必要性について理解を求めます。
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B ネット銀行・ゆうちょ銀行を利用する
ネット銀行やゆうちょ銀行は、比較的容易に預金口座を開設できます。
とりあえず、 ネット銀行かゆうちょ銀行で口座を開設して数ヶ月間取引を行い、一定の実績を積んでから通常の銀行に預金口座を開設します。
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このように、振り込め詐欺などの金融犯罪のために、新規に会社を設立したばかりの方々が大変な迷惑を被っているわけですが、この問題は預金口座の開設手続きを厳格化するなどという場当たり的な方法では到底解決できるものではありません。
預金口座の開設手続きの厳格化により、かえって社会的な不利益が生じていることを思うと、金融犯罪に対して厳罰を科すなどの根本的な解決策が望まれます。