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NO.18
 2012年1月24日号

 「振り込め詐欺」による損失は、雑損控除が受けられるか?

  
 振り込め詐欺により、多額の現金を騙し取られる被害が頻発しています。振り込め詐欺により騙し取られた金額の損失について、所得税法第72条の「雑損控除」が適用できるか否かが争われた、国税不服審判所の裁決事例です。
 
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−雑損控除とは?−
 「雑損控除」とは、納税者やその親族等の資産について、災害、盗難又は横領により損失が生じた場合に、所得から一定金額を差引くことができる制度です。
 
−被害のいきさつ−
 A氏は、平成20年4月、長男を名乗る者から電話で「勤務先の金を流用したので、穴埋めのための金が必要である。」とうそを告げられ、郵便局から相手方指定の銀行口座へ240万円を振込み送金しました。さらに、同年4月8日と4月10日にも同じ趣旨のうそを告げられ、再び260万円と320万円を振込み送金しましたので、A氏は総額で820万円の現金を騙し取られたことになります。
 その後、A氏は電話の相手が長男ではないことを知り、平成20年4月11日に警察署に被害届を提出しました。
 A氏は、騙し取られた金額の損失が、所得税法第72条第1項(雑損控除)にある「災害又は盗難若しくは横領」のいずれかに当たると主張しました。
 
 
−審判所の判断−
<結 論>
 これに対して審判所は、A氏が受けた損失は、「災害又は盗難若しくは横領」のいずれにも当たらないとして、A氏の主張を退けました。
 
<判断の根拠>
 審判所は、「災害」、「盗難」及び「横領」は、いずれも個別の概念であるとして、それぞれについて、A氏の主張を個別に否定しています。
@ 災害
 A氏の振込み送金は、A氏の意思に基づいてなされたものだから、この損失は「災害」による損失には当たらない。
 
A 盗難
 
 「盗難」とは、「財物の占有者の意思に反して第三者が財物を占有すること」であるが、この損失は、振込み送金がA氏本人の 意思に基づいてなされているから、「盗難」による損失には当たらない。
 
B 横領
 
 「横領」とは、「他人の物の占有者が委託の任務にそむいて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできないよう  な処分をすること」であるが、振り込め詐欺の犯人はそもそもA氏の物の占有者ではないから、この損失は「横領」による損失 には当たらない。
 
   国税不服審判所平成23年5月23日裁決 → http://www.kfs.go.jp/service/JP/83/09/index.html
 
  これが審判所の判断です 。「災害」、「盗難」、「横領」の語句の定義からすればわからないこともないのですが、世間一般の 常識からして、どうにも納得がいかない裁決のようにも感じられます。
 

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