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NO.19
 2012年3月5日号

 がん保険を使った節税は「風前の灯火」。国税庁、新通達を準備

  
 国税庁は、がん保険を利用した節税に対して新たな制約を設けるべく、新規通達の発遣を予定しています。保険による節税対策が次々に制約されていく中で、いわば「最後の砦」として広く用いられてきたがん保険による節税対策が、今後大きく制約を受けることになります。
 
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1.がん保険による節税のしくみ
 
 会社が、社長を被保険者、会社を受取人としてがん保険に加入し、1年分の保険料をまとめて支払ったとします。1年分の保険料を100万円とすると、会社はその事業年度の利益が100万円減少しますから、その分法人税等の節税になります。
 翌事業年度以降、その保険契約を解約すると、高い返戻率で計算された保険料が会社に戻されます。解約時の返戻率を80%としますと、会社は80万円の解約返戻金を受け取ることができるのです。
 がん保険は、保険期間の前半に支払う保険料の中に前払部分が多く含まれているため、保険契約を解約すると、解約の時期にもよりますが、先に支払った保険料のうち前払部分が返金されるからです。
 解約による返戻金には法人税等が課税されるものの、がん保険に加入することで課税の繰延を図ることができるため、この節税方法は、これまで主に黒字会社の間で広く用いられてきました。
 
2.改正(案)の内容
 
 国税庁は、このような節税に対して、法令解釈通達を新規に発遣することで対応しようとしています。
 具体的には、一定の条件に該当する終身保障タイプのがん保険に加入して保険料を支払った場合には、保険期間のうち前半50%の期間については、支払った保険料の2分の1を損金とは認めず、前払費用として資産に計上することを求めています。その後、後半50%の期間で、前半で前払費用とした金額を取り崩していくことになります。
 従来のがん保険の保険料を全額損金に算入できるという取り扱いは、平成13年の法令解釈通達で定められたものですが、その後、専ら節税を主眼に置いた保険商品が多く売り出され、当時の通達が実情に合わなくなったことが、この改正の背景にあります。
 がん保険にかかわらず、保険を利用した節税については、<新商品の売り出し → 通達による規制>の繰り返しで、がん保険による節税が規制されるのも、以前から時間の問題と言われてきたところです。

3.改正前の保険契約はどうなるのか
 
 国税庁は、この度の改正について納税者の意見を求めています。
 
 
 しかし、反対意見を言ったからといって通達発遣が覆るものでもなく、黒字法人で保険利用による節税をお考えの方は、新通達がいつから適用されるかに十分注意する必要があります。
 新通達には、「平成〇年〇月〇日前の契約に係るがん保険の保険料については、なお従前の例による」と記載されます。つまり、新通達が適用される前の保険契約については、その保険料を全額損金算入できることになりますから、新通達の発遣に向けて、がん保険の駆け込み契約が増加することが予想されます。
 

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