上場株式のように取引価額が公表されているものは、株式の価値は客観的に明らかです。ところが、多くのオーナー企業などの株式は取引相場がないため、株式を発行している会社の財産の価値を細かく計算してみないと、その株式の本当の価値はわかりません。
贈与する株式の価値(評価額)が、贈与税の基礎控除額(年間で110万円)を超えると贈与税が発生します。
そこで、まず1株当たりの評価額を計算することが必要ですが、この計算はかなり複雑で、通常は税理士などの専門家に依頼することが多いようです。評価額の計算の複雑さは会社の状態によって様々ですが、一般に歴史の古い会社ほど複雑で難しくなる傾向があります。
専門家に依頼するにしても、まず、ご自分の会社の株式がどのような方法で評価されるかについて、概略をご理解なさっておく必要があるでしょう。
株式の評価額は、税法に定められた方法にしたがって計算します。一般に、会社の利益が出ていて純資産が多ければ多いほど株式の評価額は高くなりますが、利益がでていなくても会社が価値の高い不動産を持っていたりすると評価額が高くなることがあります。
株式の評価方法を大まかに申し上げると、次のように、会社の規模によって評価の仕方が異なります。
A 個人企業に近い
小会社は、個人の財産を評価する方法に準じて、次表@の純資産価額方式により評
価します。ただし、次表Bの併用方式が有利なときは併用方式によることができます。
B 上場会社に匹敵するような
大会社の株式は、類似の事業を営む上場会社の株価に基づいて、Aの類
似業種比準価額方式で評価します。ただし、@純資産価額方式による方が有利なときは純資産価額方
式によることができます。
C 中会社については、@純資産価額方式とA類似業種比準価額方式との併用方式で評価します。
原則的評価 |
@ 純資産価額方式
(小会社に適用) |
会社の総資産から負債の合計額を差し引いた額(純資産)を
発行済株式数で割って評価額を求める方法 |
A 類似業種比準価額方式
(大会社に適用) |
類似する事業を営む上場会社の株価を基礎にして評価する方法 |
B 併用方式
(中会社に適用) |
@とAを併用して評価する方法 |
特例的評価 |
配当還元方式
(零細株主に適用) |
次の計算式で評価する方法
その株式の年配当金額
10% |
× |
その株式の1株当りの資本金の額
50円 |
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では、大会社・中会社・小会社のどれに該当するかはどのような基準で判断すればよいのでしょうか。ご自分の会社を次の表に当てはめてみてください。
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はい |
|
いいえ |
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P |
S |
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総資産価額 |
. |
従業員数 |
直前期末1年間の取引金額(年商) |
会社規模 |
卸売業 |
20億円以上 |
かつ |
50人超 |
80億円以上 |
大会社 |
7000万円以上 |
かつ |
5人超 |
2億円以上80億円未満 |
中会社 |
7000万円未満 |
又は |
5人以下 |
2億円未満 |
小会社 |
小売・サービス業 |
10億円以上 |
かつ |
50人超 |
20億円以上 |
大会社 |
4000万円以上 |
かつ |
5人超 |
6000万円以上20億円未満 |
中会社 |
4000万円未満 |
又は |
5人以下 |
6000万円未満 |
小会社 |
上記以外 |
10億円以上 |
かつ |
50人超 |
20億円以上 |
大会社 |
5000万円以上 |
かつ |
5人超 |
8000万円以上20億円未満 |
中会社 |
5000万円未満 |
又は |
5人以下 |
8000万円未満 |
小会社 |
* 会社規模の判定は、上の表のP又はSのうち、上位の区分によって判定します。
<例> 卸売業 ・ 資産総額10億円 ・ 従業員10名 ・ 取引金額90億円
この場合は、資産総額と従業員数で見ると中会社になりますが、取引金額が80億円以上で
すから、大会社に該当します。 |
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このように、会社の規模(大会社・中会社・小会社)によってそれぞれ評価方法が異なるわけですが、一般的に、A類似業種比準価額方式による評価額の方が、@純資産価額方式による評価額より少なくなる傾向があります。
以上のご説明は「原則的評価」方法についてですが、株式の評価方法には、これとは別に「特例的評価」方法というものがあります。
特例的評価方法は、
「配当還元方式」と言われ、贈与を受けた後の持株比率が一定以下の「零細株主」について適用されます。このような零細株主は会社経営に影響を及ぼすことはできません。株式を持つことのメリットは配当を受けることだけですから、配当金額を基礎として評価額を計算することになります。
配当還元方式は、一定の条件をみたす零細株主であれば、会社の規模にかかわらず適用されます。
配当還元方式によると、株式の評価額は原則的評価による場合よりも概して少なく算定されますが、仮に原則的評価方法による評価額の方が少ないときは、原則的評価方法で評価した金額を評価額とします。
上場していない株式には客観的な時価がありませんから、上記の方法で計算された評価額を「時価」と考えることが多いようです。この評価額は、贈与ばかりでなく個人間で株式を売買するときも、売買価額を決めるための基準として利用することができます。