1.領収書や請求書の保存期間は7年です
会社の取引の過程で作成される書類のうちで最も量が多いのが請求書や領収書です。貸借対照表や損益計算書などの書類は、1事業年度に通常は1部作成されるだけですし、総勘定元帳などの帳簿は一定の厚みがありますが、これも1事業年度について1冊です。
これに対して請求書や領収書は取引のつど作成され、また書類のサイズもまちまちですから、保管するのに多くの時間とスペースを必要とします。
しかし、これらの書類は税務調査が終わったからといって、簡単に処分するわけにはいきません。具体的には、会社はこれらの書類を法人税の確定申告書の提出期限から7年間保存しておく義務があります。平成27年3月決算の法人の場合ですと平成27年5月31日が確定申告書の提出期限ですから、平成34年5月31日まで書類を保存しておくことになります。
2.保存期間が9年の場合もあります
現在、前期以前に生じた税務上の赤字(「繰越欠損金」と言います)は、その後9年間繰り越して会社の所得から差し引くことができます。これは「欠損金の繰越控除」と言って、青色申告をしている法人に認められている制度です。
この制度との整合性を取る意味で、欠損金の生じた事業年度においては、書類の保存義期間は9年間とされています。税務調査の際、9年前まで遡って調査されることは稀ですが、欠損金の繰越控除が9年間認められる以上、請求書や領収書も9年間保存しておかなくてはいけない、という理屈です。
9年間の保存義務があるのは、平成20年4月1日以後に終了した事業年度のうち、欠損金が生じた事業年度についてです。
2.領収書などをスキャナ保存する場合
では、多量の書類を紙で保存する代わりに、スキャナ保存する場合はどうでしょうか。これなら、少なくとも書類の保存のために倉庫を借りる必要などはなくなります。
しかし、スキャナ保存は一応認められてはいるものの、3万円未満の契約書や領収書だけに限られています。そうすると、領収書を保存する際、3万円未満のものと,3万円以上のものとにいちいち仕分けしてそれぞれスキャナ保存と紙保存とを行わなくてはなりません。これでは、「そんな煩雑なことをするくらいなら全部紙で保存した方が合理的」ということになりますから、スキャナ保存は制度としては存在しますが、現状ではあまり普及していません。
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従来は、スキャナ保存が認められていたのは、3万円未満の契約書及び領収書だけでしたが、平成27年度の税制改正で、この制限が廃止され、契約書・領収書等については全てスキャナ保存できるようになります。
スキャナ保存は、「適正な事務処理」等が行われているなどの承認を受けることが条件とされていますから、無条件に認められる訳ではありません。
しかし、スキャナ保存を行えば、これまで領収書を1枚ずつスクラップブックに貼付してキャビネットに保管していたことを考えると、格段に利便性が増しそうです。
また、スキャナ保存は、カラーである必要はなく、白黒での保存も認められます。
この改正は、平成27年9月30日以後に承認申請が行われたものについて適用される予定です。
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